2012年3月10日土曜日

Mar.10 (Sat) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 封印された「炉心溶融」 事故翌日に言及、担当者交代・・・福島第1原発事故 対策本部議事概要
政府が9日に公表した原子力災害対策本部の議事概要で、昨年3月11日の東日本大震災直後から東京電力福島第1原子力発電所事故での炉心溶融(メルトダウン)の可能性を想定していたことが明らかになった。菅直人首相らは早い段階で、最悪の原発事故にもなりうるとの危機感を共有していたが、こうした認識は対外的には公表されていなかった。事故に関する一連の記者会見では炉心溶融という表現を避けており、国民への情報発信の姿勢が改めて問われることになりそうだ。(肩書は当時)
未曾有の天災に見舞われたということで、初動に多少の混乱があったことは責められないとは思うが、原発事故への対応や議事録未作成などといったものは不手際を責められてしかるべきだ。原発事故への説明についてはその内容によっては国民にパニックをもたらすリスクがあり、表現には細心の注意が必要だったとは思うが、だからといって事実を隠蔽していいということではない。おそらくは当時官房長官だった枝野氏が「絶対大丈夫」と言い切ってしまったので、後々判明してきた事実を公表したくともできないジレンマに陥ったのではないかとも思える。

原発事故での拡散放射能の影響は今後数年以上経たないと発現しないが、当時の政府の事なかれ主義的な発表に事態を軽視して結果発病するようなことがあれば、当時の政府対応の問題が再度論じられることだろう。議事録を作成していないことについても、明らかに後からの責任追及を回避したい表れとしか思えず、今後の国家危機の際の対応検討に活かせないことにもつながり、ただ謝罪すればよいという問題ではないと感じる。


  • 大王製紙、来春入社の新卒採用中止
大王製紙が2013年4月入社の新卒採用を中止したことがわかった。新卒採用の募集に関し説明会を実施済みだったが、応募した学生に採用を見合わせると通知した。採用を取りやめた理由は「社内事情のため答えられない」(広報担当)としている。昨秋発覚した前会長の巨額借り入れ問題に絡み収益が悪化しており、人件費削減も狙いとみられる。
お家騒動もいい加減に決着させないと、自社内だけの影響にとどまらず社会的なダメージや株主・金融機関からの突き上げをくらうだろう。巨額粉飾が発覚したオリンパスとは問題が異なるが、どちらも企業経営が不透明で密室談合政治をしているような印象を拭えないので、そういった点を改善する方向性を見せないと信頼回復は難しいだろう。

2012年3月9日金曜日

Mar.09 (Fri) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 予算案が衆院を通過 消費増税巡る攻防本格化
一般会計総額90兆3339億円の2012年度予算案が8日の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決、参院に送付された。予算案は参院の議決がなくても憲法の衆院優越規定により4月6日に自然成立する。来年度予算案の成立が確実になったことで、消費増税関連法案をめぐる与野党内の攻防が本格化する。
復興関連予算を加えると96兆円規模で過去最大。今の予算は赤字国債の発行なしでは執行できないので、赤字国債発行法案が承認されないと予算が成立しないが、現時点で赤字国債発行法案の可決見通しは立っていない。特に今回政府は震災絡みで復興債を起債しようとしているが、そこに赤字国債分を付け回ししようとして野党から追求を受けている。赤字国債発行法案には消費増税法案が含まれるから今後消費増税を巡って政局化する可能性が高いが、首相が伝家の宝刀を抜いて衆院解散するまではいかない気がする。
どのみちここで衆院解散されたところで、国民は投票先を選びようがないだろう。


  • タブレット端末、1億台時代へ 新iPad 16日発売・・・企業・学校・家庭に浸透 広がる用途、パソコン猛追
米アップルが16日に日米など10カ国・地域で第3世代となるタブレット(多機能携帯端末)「iPad(アイパッド)」の新機種を発売する。高精細ディスプレーと動画処理能力の高い半導体を搭載。高速携帯電話の通信網に対応する。タブレットは2012年に世界出荷が1億台を超えるとみられ、インターネット端末としてパソコン、高機能携帯電話(スマートフォン=スマホ)に次ぐ地位を確立しつつある。
パソコンは以前はネットやソフトウェアを操作するのに必須とされており、その習得も結構大変だったが、タッチパネルで簡単に操作できるスマホやタブレットは敷居が低いので、子どもや高齢者などが初めて触るのにはとっつきやすく、今後もさらに伸びていくだろう。一方でパソコンは既に一定の役割を終えた感があり、タブレットなどでは物足りなくなった層や業務用などでの使用用途に狭まっていき、市場自体は収縮していくと思われる。


  • 全日空、格安台頭でも接客で勝負 社内コンテスト開催
全日本空輸は8日、国内空港で働く接客業務担当者の社内コンテストを開催した。予選を勝ち抜いたスタッフが笑顔で接客スキルを披露、今後の全社的なサービス向上に役立てる狙いだ。最近は格安航空会社(LCC)の台頭が目立つが、全日空は「フルサービスキャリア」としての品質向上につなげる。
LCCを立ちあげている全日空自身が子会社と張り合ってもしょうがないような気がするが、得てして価格やサービスでの競争を横において接客を前面に出してくる企業はどこも衰退している。商品を買う場合の最大要因は価格だから、全日空本体においてもコスト競争力を高める努力が求められるだろう。

2012年3月8日木曜日

Mar.08 (Thu) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 首相、消費増税法案の修正に含み・・・低所得者対策など想定
野田佳彦首相は7日、内閣記者会とのインタビューで、今国会最大の焦点である消費増税関連法案について「期限を守りたい」と述べ、今月中の国会提出を明言した。法案提出後も野党に協議を呼びかける考えも表明した。「議論していけばお互い納得できる合意形成の素地はある」と法案修正に含みを残した。
経済弾力条項を追加することで、なんとか法案自体を成立させたい首相だが、低所得者対策追加や景気悪化の場合に増税を停止するなどといった施策では仮に法案が通って増税しても経済は悪化するだけだろう。緊縮財政(といっても緊縮できていないが)と増税をセットでやるバカはいないと思っていたが、今の政府は本当にやろうとしているのでたちが悪い。


  • パートの社会保険適用拡大、政府最終案に民主内から異論 政調会長「20万人より多く」
民主党内で7日、政府が検討しているパート労働者への社会保険(厚生年金・企業健保)の適用拡大について意見が相次いだ。民主党の前原誠司政調会長は適用拡大に理解を示したが、企業の負担増を懸念する党経済産業部門会議の議員からは、法案提出の先送りを要求する声が上がった。
これも愚策だが、低所得者と企業から年金財源を巻き上げようとするのは一人当たりの徴収額も支給額も低くなるから一人当たり事務コストが上がって非効率になるばかりだ。そして企業は負担増になったコストを価格やサービスに転嫁するから景気悪化要因にもなる。国会議員自らの議員年金や公務員の共済年金など厚生年金や国民年金よりもはるかに厚遇された年金や保険組合からの条件取り崩しをさせたほうが手間もかからないし国民全体の不公平感も中和できる。


  • 関係先捜索の「2ちゃんねる」 運営権海外に、責任者は不明
インターネットの総合掲示板「2ちゃんねる」の関連先とみられる企業に警視庁が家宅捜索に入っていたことが7日、明らかになった。匿名・登録無用で利用できる「2ちゃんねる」はその手軽さから根強い人気を保っているが、運営権は海外企業に譲渡されており、管理責任の所在が不明確になっている。
報道するからには摘発されないと、2ちゃんねるが有効なツールと認識されて新たな情報源提供者が増えるだけのような気がする。

2012年3月7日水曜日

Mar.07 (Wed) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 公務員、遠い抜本改革・・・採用削減、09年度比4割超 政府、消費増税対策を先行
政府は6日の行政改革実行本部(本部長・野田佳彦首相)で、2013年度の国家公務員の新規採用を09年度比で4割超削減する方針を決めた。国家公務員の給与を12年度から2年間、平均7.8%引き下げる特例措置に続き「消費増税対策」の色彩が濃い。民主党が掲げた公務員制度の抜本改革も遠のいている。

公務員改革と一言でいっても、公務員制度や公務員への支出内容のどこに問題があるのかをはっきりさせて、そこに手を打たないと具体的な効果は得られずトカゲの尻尾きりに終わる。採用削減にしても同様で、もともと自公政権時に8000人程度だった新卒採用数を2000~3000人減らしたところで一つの効果にはあげられるかもしれないが、中長期的に見れば年齢別の人員バランスがくずれて組織の弱体化を生みやすい。

本当にメスを入れるべきなのは地方公務員や独立行政法人、特殊法人、認可法人、特別民間法人、外郭団体などの天下り先への人員や税の投入であろう。国家公務員は56万人程度に対して地方公務員は230万人強。ここに27兆円の人件費がかかっているが、ここまでが一般的に公務員数や公務員人件費で取り上げられる数字なのだが、問題はここに出てこないそれ以外の準公務員への支出である。

企業においてもリストラの一環で人件費の削減をする際に、目眩ましをするやり方として外部委託を増やしたり子会社への出向などで企業本体の人件費を「見た目上」下げる手法があるが、これと同様に、公務員も正規公務員から準公務員へと転出させて見た目上の公務員数や公務員人件費を下げているような見せ方をしている。そして準公務員数の実態は公になっていないので実際には何人いていくら給与を支払っているかが掴みづらくなっている。公務員といっても実際には事業収入で人件費を賄っているNTTや日本たばこ産業などもあるが、そういった事業会社を除いても公務員数の300万人弱を上回る数の準公務員が存在するといわれているので、明らかに公務員への支払人件費は50兆円を超えていると思われ、これだけで税収を超えている。民間企業でいえば、売上から原価を引いた粗利益よりも人件費が上回っている状態で、普通なら倒産している。

だから政府は早期に抜本的な公務員改革法案を成立させなければならないのだが、そのやり方としては天下りを禁止するといった対症療法的な政策ではなく、公務員サービスの中身と役割の見直しや、中央と地方の二重行政の廃止、地方においては広域行政サービスへの統合により単一自治体でのサービスを廃止するなど、トータルの公務員サービスに係る全体経費への改革が求められているのだ。


  • 東西の電気周波数、統一ならコスト10兆円
経済産業省は6日、東西日本で異なる電気の周波数を統一した場合、電力会社の設備交換だけで約10兆円のコストがかかるとの試算をまとめた。東日本の50ヘルツを60ヘルツに統一する場合を想定し、発電機などの交換費用を算出。工場のモーターなど需要家側も対応投資が必要なことも指摘した。
めんどくさいからやりたがらない官僚の言い訳のような報告が出ているが、長期的にみれば10兆円かかっても大したコストではなく、ここで出ていない周波数統合によって得られる経済メリットを加えれば回収可能なものに思われる。電気製品を作っている企業にしても周波数が統一されれば部品の単価は下げられるし、機器の切り替えによる新たな需要も生まれるから補助金の投入は必要になるにせよ、道路や新幹線を今さら整備するよりもはるかにメリットの大きな公共事業になる。


  • アサヒのビール風味飲料「ドライゼロ」 飲食店、年内20万店に 
アサヒグループホールディングス傘下のアサヒビールは2月下旬に売り出したアルコール分0%のビール風味飲料「ドライゼロ」を取り扱う飲食店を現在の約3万店から年内に20万店まで増やす。小路明善社長が明らかにした。成長が続くノンアルコールビール市場で競合他社より出遅れていたが、家庭向けの商品と並行して業務用市場を開拓して巻き返す。
飲酒運転事故などが社会問題化したり、酒税の引き上げなどで低アルコール=低価格化へ需要がシフトしているのでノンアルコール飲料が伸びていくのは当たり前だが、一方で酒税の低いこういった飲料構成比が伸びればまた酒税収入は減っていく。たばこも大幅値上げで喫煙者減少に拍車がかかり、たばこ税収入も減少しているが、過去は税収の半分を占めていた時期もあった酒税が、いまでは年間1兆円台で構成比もヒトケタに落ち込んでいる。そういう意味では税制そのものも見直しが必要になってきているわけで、伸びている業界に掛ける税金としては「パケット通信税」とかが誕生するのかもしれない。

2012年3月6日火曜日

Mar.06 (Tue) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 議員給与、年300万円削減 民主、期間は野党と調整
民主党は5日の役員会で、国会議員の給与にあたる歳費について、1人当たり年額300万円を削減する方針を確認した。ボーナス2回を含めて国会議員1人が年間に受け取る歳費約2100万円の14%に相当する。近く野党に提案する。削減期間は「当面1年」としているが、野党と調整する。消費増税関連法案の月内提出に向けた環境整備の一環。

14%と聞けばかなりの削減に見えるが、国会議員の給与は歳費以外にもいろいろある。

1)月額給与         1301000円(年間 15,612,000円)
2)ボーナス          6354480円(年間  6,354,480円)
3)文書通信交通滞在費   100万円(年間 12,000,000円) ※非課税

小計                    年間 33,966,480円

今回は1)と2)の合計に対して14%削減といっているので、3)を加えると実質10%弱だ。

さらに国会議員にはこれ以外にももらっている。
4)公設秘書給与(3名まで)      年間 27,000,000円 ※平均

そして、公設秘書は国家公務員扱いなのだが、今回の国家公務員給与引き下げ法案での7.8%削減の「対象外」となっている。

まだまだある。これは国会議員本人に入るわけではないが、政党に対して国会議員の数などの割合に応じて政党助成金が交付されている。

5)政党交付金 国民一人当たり250円 = 319億円
これを国会議員数で割ると 319億円÷722人≒44,000,000円

1)から5)の合計 = 1億496万6480円

つまり、国会議員一人にはこれだけのコストがかかっている。これ以外にも議員特権でJR全線が無料、航空機が月4回まで無料など、目に見えないコストも含めるとさらにかかっているが、これらはすべて税金から賄われている。歳費の削減のみならず、議員定数の削減も含めて「身を切る」姿勢を見せないと、国家公務員も納得はしないだろう。


  • プーチン氏と電話協議 首相、北方領土に言及 ・・・「2人で英知ある解決を」
野田佳彦首相は5日、ロシア大統領選で当選したプーチン首相と電話で協議し「北方領土問題について、プーチン首相との間で英知ある解決に取り組みたい」と述べた。領土問題の解決に意欲を示すプーチン氏の指導力に期待するが、4島返還を求める日本と、ロシアの隔たりは大きい。

プーチン氏は過去のソ連、ロシア指導者のなかでは比較的親日にみえるが、北方領土問題の解決においても幾度か発言していることからも、解決機運が高まっている。
北方領土は歯舞、色丹、国後、択捉の4島を指すが、もともとは1855年に日露で日本領としていたものを、第二次世界大戦後にソ連(ロシア)に実効支配され、現状も続いている。
外交上では1956年の日ソ共同宣言で歯舞・色丹を日本に引き渡す話になっていたが、1960年に日本が日米安保条約を改定したことにソ連が反発し、膠着状態が続いている。

北方領土の返還パターンについては、

1) 4島返還
2) 3島 (歯舞・色丹・国後)+択捉島の一部を返還 ・・・面積2等分案
3) 3島(歯舞・色丹・国後)返還
4) 2島(歯舞・色丹)返還

があり、日本が外交的に主張しているのは1)で、ロシアが外交的に認めているのは4)である。
そこで、国内では先に双方の利害が一致する4)を実施し、その後残りの2島の返還交渉を行なっていく案も出ており、決着させるにしてもどの案でいくのか非常に悩ましい。
ロシアが北方領土を返還しない、特に国後・択捉島を返還しない最大の理由は軍事的なもので、オホーツク海から外界へ出る航路の最大のものが国後・択捉島の間にある国後水道だからだ。
日本が軍事的にはアメリカに支配されているため、ロシアとしては国防上ここの制海権に影響を与える4島返還にはまず応じないだろう。北方領土問題を多少なりとも進めるにはまず4)を実行するかどうかにかかっている。あまり先送りすると北方領土に住んでいた人たちもいなくなってしまい、問題が風化する可能性もある。

  • ネット規制対立激化 ・・・新興国、「管理」狙い攻勢 先進国、自由確保へ防戦
インターネット情報の規制を巡り、新興国と先進国の対立が激化している。中国やロシアなどは国家による規制と管理強化を狙い、国際的な枠組み構築を狙う。中東の民主化運動「アラブの春」の波及を恐れる途上国は中ロに同調する構えを見せており、ネット上で情報の自由なやり取りを続けたい先進国は防戦一方だ。

対立の構図は日米欧が自由化、中国・ロシアは国家規制派、新興国や途上国は規制派に同調といった感じになっている。もともとインターネット技術はアメリカの軍事技術から派生しているため、IPアドレスを発行する国際非営利団体も実質的にはアメリカ商務省が握っており、アメリカのインターネット支配に対して中国・ロシアが反発しているのが実態だ。最近のアラブ諸国での解放運動などもツイッターやフェイスブックなどネットでのやり取りで民衆が蜂起したことから、権力者側はネットの完全自由化には否定的になっているが、国ごとの規制ができてしまうとインターネット本来の良さも失われるし、特にネットビジネスをしているIT企業ではグローバル展開に支障をきたすだろう。ただネット犯罪への各国での法統制はバラバラで足並みが揃っていないことも問題としてあるので、何がしかのガイドラインの作成は必要だと思われる。

  • 小沢元代表、大阪入り 橋下氏と接触図る?
民主党の小沢一郎元代表=似顔=が4、5両日に大阪市に入った。野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁による極秘会談を受けて浮上した与野党第1党のトップ同士で衆院解散の時期を決める「話し合い解散」に警戒を強めており、次期衆院選をにらんで「橋下徹大阪市長に接触を図ったのではないか」との見方が出ている。

仮に小沢氏が橋下氏と会っていたとすると、政府が消費増税法案を強行して自民党と組んで採決し、衆院解散しようとしたときに小沢グループが造反するぞ、という牽制なのだろう。野田首相も谷垣総裁と会うよりも小沢氏と会って話をすべきなのだが、どういうわけなのか自らは動こうとしない。そこに民主党内の暗部があるのだろう。

2012年3月5日月曜日

Mar.05 (Mon) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 政権戦略、混迷の自民 ・・・話し合い解散・大連立・対決… 中堅・若手からは総裁交代論 
自民党内で野田佳彦首相と谷垣禎一総裁の極秘会談を機に政権獲得戦略の対立が浮かび上がってきた。執行部は衆院解散時期を約束させる代わりに消費増税関連法案に協力する「話し合い解散」を探る。対決を訴える中堅・若手は反発し、谷垣氏の交代論に触れる。民主党との大連立論も再燃しており、党内は混迷を深めている。
谷垣氏では衆院選が戦えないといった中堅・若手議員からの突き上げ、そして前回落選し復活を目指して活動する元議員などからの反発が強まっている。自民党は長く政権与党にいて、本格的に野党に下ったのははじめてだからかもしれないが、民主党への追求にしても「われわれも以前与党だったので大変なのはわかります」のような配慮をした発言が多く、そこが民主党議員の甘えを生んでいる。一部には野党議員らしく厳しく追求できる自民党議員もいるが、多くはこれまで自民党に属していなかった新しい議員に多く、古参の議員は委員会質疑にもほとんど出てこようとしない。 とはいえ、中堅・若手議員においても谷垣総裁に代わるだけの人材は出てきているのかというと、おそらくは石破議員や石原幹事長あたりを担ぐのが関の山だろう。

大阪の橋下市長は国会議員に対しても言いたい放題で、国会がちゃんと仕事していないから維新の会から国会議員を出すとまで言われている。それに奮起して維新の会以上に精力的に国家の問題を取り上げ、問題提起し、解決の方向性を打ち出そうとする政策集団や政治家は生まれてこないものなのか。
未だに石原新党だとか、小沢グループだとか、これまでの有力政治家の名前で政治が動いているわけだが、この現状を打破する勢力を誰かが作らないと道は開けないだろう。橋下氏は確かに行動力もあるし弁舌も明快で仮に国政に出たとしてもそれなりの活躍はするとは思うが、彼よりももっと質の高い政治を志していてその能力も合わせ持った政治家は国会にもたくさんいるような気がする。

2012年3月3日土曜日

Mar. 03 (Sat) .2012

◆ 日経拾い読み


  • AIJ運用委託、社保庁人脈で広がる・・・OBの勧誘きっかけ 複数の年金基金にも天下りOB
AIJ投資顧問による年金消失問題をめぐって、旧社会保険庁(現日本年金機構)のOB(74)がAIJの販路拡大に深くかかわっていたことが2日、判明した。このOBが経営するコンサルティング会社が投資顧問会社のAIJとコンサル契約を締結。運用経験の乏しい社保庁出身者が天下りした先の厚生年金基金に、AIJへの運用委託を勧めた。社保庁出身者のネットワークで高い利回りをうたったAIJの事業が急拡大していった構図だ。
案の定というか、天下りOBが関与していた。まあ、社保庁の問題が大きくなるのは歳入庁の立ち上げを目論む陣営としては追い風だから、マスコミも社保庁叩きに走る可能性は高い。


  • 話し合い解散、信頼の壁 ・・・首相、増税法案賛成の保証を 谷垣氏、首相の確約と引き換えに
野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁による極秘会談を契機として、与野党第1党のトップ同士で衆院解散の時期を決める「話し合い解散」に与野党内で関心が強まってきた。消費増税実現へ自民党の協力を得たい首相と、早期解散を優先する谷垣氏の思惑が一致するからだ。2人の信頼関係が成否のカギを握るが、ともに相手の要求を実現する「保証」を与えられていない。
民主、自民の大連立も画策していると報じられているが、これは石原新党、みんなの党と大阪維新の会など第三極への牽制の意味もあるだろう。しかしながら、現状の政府の国家運営では日本は良くならないと訴えられれば、民主・自民とともに国民からは十把一絡げで見られる可能性があるので、次期衆院選をにらんでどういう方針を打ち出すのかを明確にしないと、維新の会がマニフェストを正式に掲げてからでは後付けの対策という批判を受けるだけだろう。


  • 復興交付金1次配分決まる 申請の6割に、自治体不満 宮城知事「査定庁」語気荒らげ 復興相「無駄なもの作らない」
復興庁が2日に決めた復興交付金の初回配分が被災地に波紋を広げている。市町村の申請額に対して交付額は6割にとどまり、自治体から不満が出ている。平野達男復興相は「無駄なものは作らない」と強調しており、国と被災自治体との間で認識に溝ができてきた。
もともと想定されていたことだが、復興庁と自治体がバトルしている。どこも自分のところの復興策を100%通したいところだが、それが通らないと首長自身の政治力の無さを疑われるので、今後も軋轢を生み続けるのは間違いない。復興庁にしても、検討事案を公表して予算の可否やその理由を明示するなどして審査過程を透明化するといった工夫をしないと、たんなるお役所仕事として批判を甘んじて受けるよりほかない。


  • 年金、集中投資を制限 政府・民主検討・・・総資産の3割軸に AIJ問題、再発防ぐ 
AIJ投資顧問による年金消失問題をふまえ、政府・民主党は2日、厚生年金基金の運用規制を見直す方向で検討に入った。運用委託先が特定の投資顧問会社に集中するのを防いで分散投資を促す。1社に運用委託する割合に上限を設け、総資産の3割以上の集中投資を禁止する案を軸に調整する。年金運用のリスク管理を強化し、再発防止につなげる。
運用を見直すのはいいが、こういう問題を引き起こす可能性が高いのは中小企業の年金運用に問題が生じているからであり、そこに対して国の支援をセットでしていかないと、単なる年金の運用先を減らすだけでさらに中小年金が苦しむハメになる。


  • 東京地検、組織的と判断 オリンパス粉飾・・・法人も起訴へ 
オリンパスの粉飾決算事件で、東京地検特捜部は2日までに、法人としての同社を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴する方針を固めたもようだ。同社前社長、菊川剛容疑者(71)ら当時の経営陣が主導した巨額の粉飾が組織的行為だったと判断した形。菊川前社長や、不正経理を指南したとされる証券会社OBらが勾留期限を迎える7日に、併せて刑事処分するとみられる。
こういった粉飾が起きた際に、「取締役会や監査法人は機能していないのか?」という議論が常に沸き起こるが、そもそも有価証券報告書の作成には多くの企業では財務・経理部門と経営企画部門、そして社長など取締役のなかでもトップと財務経理担当役員で内容のやり取りをすることが多く、少数で決算の方針が決まってそれが取締役会に提出されるから、他の取締役の牽制が働きにくい。それは財務や経理、会計といった知識を多くの取締役が持ちあわせていないことも理由にあるが、このへんの根本的な企業経営上の問題点をどうにかしないとどのような規制を加えようが、大きくは変わらないだろう。

2012年3月2日金曜日

Mar.02 (Fri) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 首相、谷垣氏と先月極秘会談 反増税の小沢系けん制 ・・・「話し合い解散」動揺誘う
野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁が2月25日に極秘会談していたことが明るみに出た。首相は命運をかける消費増税関連法案の今国会成立を期し、局面打開を探った。自民党との「話し合い解散」をにおわせ、小沢一郎元代表ら民主党内の消費増税反対派をけん制する。関連法案の国会提出を予定する月末に向けた駆け引きは激しさを増してきた。
当人たちは会談を否定しているが、ここまでマスコミに書かれるのなら事実なのだろう。首相としては、党内の小沢グループに消費増税法案を賛同をもらわずとも自民党と手を組んで通せるのなら都合がいいわけで、民主党内で一致して通すか、自民と手を組んで通すかといった選択肢を増やせるメリットがあるが、自民党にとって増税法案に賛成して解散総選挙に持ち込むということへのメリットが何なのかよくわからない。選挙戦になれば、他党からは「民主党と結託して国民負担を増やそうとした」と言われるのは明白で、自民議員にとっては民主党との差別化がより図りにくくなるわけで、谷垣総裁の党内への説明が求められるだろう。

そもそも極秘会談というのは、漏れないことが前提で行われるべきで、後々説明が必要になる行動ならば最初から表立って会えばいいわけだし、こういった形でリークするメリットがあるのは民主党だから、谷垣総裁は今回のように表沙汰になることは想定せずに会ったフシもある。

2012年3月1日木曜日

Mar.01 (Thu) .2012

◆ 日経拾い読み


  • 北朝鮮、ウラン濃縮停止・・・米朝合意、核・ミサイル実験凍結 IAEA監視受け入れ
米国務省は29日、北朝鮮がウラン濃縮活動の停止を含む核関連活動の凍結で合意したと発表した。ウラン濃縮の停止の検証と監視のため国際原子力機関(IAEA)の査察官の復帰も受け入れるとしている。米側は北朝鮮が求めてきた食糧支援の実施に向けた最終調整に入る。北朝鮮側も同様の発表をしたが、細部の解釈や認識には違いもみられる。
内容としては、北朝鮮の核活動の「臨時中止」とアメリカからの食糧支援の「予定」が双方から発表されたということで、半歩は進んだのだろうがまだ先行きがどうなるかはわからない。まずはお互いジャブを出しあって様子を見たくらいのレベルだろう。


  • 首相・谷垣氏が極秘会談の情報・・・25日昼、両氏は否定
野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁が先週末の25日昼に会談していたとの情報が29日、与野党内で流れた。同日の政府・民主三役会議に出席した党幹部によると、藤村修官房長官は「外(向け)には会っていないということだ」と説明した。
この日は党首討論で互いに議論していたが、本当に当人同士が会っていたのなら谷垣氏としては非常にまずい立場に追い込まれるだろう。野田総理も消費税増税法案についての協力を谷垣氏に要請していたとすると、与党内で反対している小沢氏グループや国民新党などから突き上げをくらう。


  • 格安航空ピーチ、バス並み運賃で挑む・・・きょう就航、日本定着への試金石に
全日本空輸などが出資する格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションが1日、関西国際空港と札幌、福岡を結ぶ路線に就航する。日本勢初の本格的なLCCとなる同社を手始めに日本航空と全日空がそれぞれ出資する他の2社も今夏に就航する。潜在需要を掘り起こす一方、従来型の航空会社との競合が予想され、航空運賃の下落圧力になる可能性もある。
日航や全日空にとっては、LCC業界でも主導権を握りたいのだろうが、うまくいくようなら本体の経営モデルの見直しを迫られかねず、うまくいかなければ本体への経営ダメージを食らうので、どっちに転んでもあまりおいしくはない気がする。ただ、格安航空会社はコストを削減して航空運賃を安く提供することを標榜しているが、飛行機にお客を乗せて空を飛ぶこと自体は一般の航空会社とさほど変わるわけではないので、安全確保のためのコストをどう維持するかをきちんとアピールしないと怖くて乗れない人が多いと思う。