2012年1月31日火曜日

Jan.31 (Tue).2012

◆ 日経拾い読み(目についた記事を勝手に論評)

  • 欧州、危機下の消費増税・・・ドイツをモデルにフランス21.2%、イタリア23%
記事の最後に日本の増税論に触れて比較してるが、日欧ともに財政赤字だから増税ありきの世論に誘導するのはどうかと感じる。


  • 年金試算見送り、民主混迷・・・与野党協議遠のく
年金財源不足をどうするか?少子高齢化で今後社会保障費の増大とともに若年層の減少により消費旺盛な世代からの税収が増えない、また税負担率が上がるために消費も増えないジレンマをどのように解決するか。個別収支項目の数字のプラスマイナスではなく、某地方自治体の市長が言っているとおり中央・地方を含めた歳出・歳入バランス、財政の枠組み自体の見直しはもちろん、そのスキームや行政システムそのものの抜本的改革をしないとこの難題を解決することは難しいように感じる。公務員人件費の見直しもその一環でやらないと、単に自治労などの反対にあって次期衆院選の票を人質にされ、結果的に案をつぶされるだけだろう。


オリンパス提携、3社争奪・・・ソニー、富士フィルム、テルモ
国内3社が資本・業務提携を巡って手を挙げているという話だが、そもそも経営陣の不正が無ければ重点事業をエサに資本提携など必要なかったわけだから、従業員にとってはなんだかなぁという感じだろう。報道等を見るかぎりではオリンパスの経営透明性を確保して経営再建する企業姿勢はあまり伝わってこないので、今後もすんなりと変わっていくかどうかは不透明なように思える。


  • 働き手、50年後に半減
厚労省の天下り機関が30日に発表した将来推計人口によると、15~64歳のいわゆる生産年齢人口が2010年には8173万人だったものが、2030年には6773万人、2060年には4418万人と、50年後には約半分にまで減るという。一般的に労働人口が減ると働き手が減るから企業も減り、そこから生まれる商品・サービスも減り、民間企業労働者から天引きしている所得税、住民税、社会保障費、そして企業が負担している法人税、雇用者の各種社会保障費も減る。そして生産年齢ではない若年層・老年層を養う費用を捻出するために国庫支出が増大する。

要因としては第一に出生率の低下。2010年に1.39となっている特殊合計出生率が2060年には1.35に低下するとみている。しかし、昨今急速に進んでいる晩婚化、未婚化や子供を持たない世帯が増えるとこの数字はさらに悪化することが予想される。そもそも出生率は2.08を超えないと人口は維持できないそうなので、これから人口が出生により増加する可能性は期待できない。
65歳以上の老年層も人口としては2010年2948万人から2060年3464万人とそれほど増えてはいないが、全体人口が減るために構成比が23%から40%に増加する。つまり現在は働いている層の3割が老年層を支えているが、やがて8割が支えることになる。ほぼ2人分働かないと成り立たない計算だ。

問題解決のポイントは出生率低下の抑止と人口増加策、社会保障費の抑制や効率化、労働生産性の向上などに集約されるだろうが、答えはどれも難しい。移民を増やして人口増、税収増を狙う考え方もあるが、根本として社会保障費が高い、そして労働生産性を押し上げる要因となっているのは各種コスト(物価、地価、人件費等)の単価が相対的に高いことに起因しているのだから、それをスリム化する方法を考えないと実現は難しいように感じる。具体的にはある程度のインフレを起こして単価を下げる、各種商品やサービス(つまりは企業)を減らして価格競争を抑制するなどが考えられる。


  • キヤノン御手洗会長が社長兼務
現社長の内田氏が相談役に退き、3/29付けで会長の御手洗氏が復帰するとのこと。キヤノンは中計で2015年12月期に売上高5兆円、営業利益率20%、純利益率10%を目標に掲げていたが、2011年度の実績は売上高3兆5574億円で前年比4%減、純利益は2486億円で前年比0.8%増、純利益率は7%となっている。今後売上拡大に向けてM&Aを駆使して医療分野などに新規事業を見出そうとしているらしいが、他の家電企業などを見ると大幅な赤字決算を計上しておりそれほど悪い業績とは思わない。そんななか、今回若手世代に移行するのではなくベテランが復帰する目的としては、老いたトップがムチ振るって業績を拡大するストーリーではなく、次世代経営者を育成して事業拡大を遂げた若手が次期社長に就くストーリーを描いて今回の人事となったことに期待したい。



  • 国債利払い費20兆円に倍増
財務省が30日に公表した後年度影響試算によると、消費税率を2015年10月に10%に引き上げたとしても国債残高は増え続けて1000兆円を超し、国債の利払い費も20兆円を超えるらしい。鍵は社会保障費の抑制にかかっているらしいが、社会保障費(107兆円)の内訳は半分が年金支出、そして医療費が3割、その他福祉が2割となっている。年金はいろいろ議論が巻き起こっているが、医療改革も必要だ。しかし、ここは日本医師会などが猛烈に反対しているから今のところ身を賭して突っ込んでいる政党・政治家は見当たらない。消費増税もいいが、所詮税収が40~50兆円で推移しているのに対して歳出が90~100兆円で推移しているのだから毎年40兆円程度の財源不足が発生して赤字国債を発行している構造そのものを変えないとどうしようもない。消費税は1%上げると机上では2兆円の税収増となるが、40兆円もの赤字を消費税で賄うとすると単純計算で25%、しかしそこまで税率を上げると消費も落ち込むから結局消費増税では抜本的な財政改革にはつながらない。


  • EU、財政均衡義務付け・・・財政規律を強化するための欧州安定メカニズム(ESM)で合意
とても好き勝手な意見だが、そもそも国力の異なる複数の国家が同じ財政ルールのもとで回そうとしているところに無理があるような気がする。経済圏を統一するのなら統治方法も統一、つまりある程度の小国は合併または大国に吸収されるなどしないと。そうしたくないんだろうから、各国の対応がいつもモメているように見える。


  • 韓国、対日赤字5800億円減
韓国銀行が30日発表した2011年の国際収支によると、対日貿易赤字が75億ドル減の286億ドルとなったらしい。主な要因は日本での震災の影響で、日本国内での調達が難しくなった機械類の輸出が伸びたからだそうだが、そういう理由ならごく一時的な影響にとどまるのだろう。貿易収支を含めた全体の経常収支は276.5億ドルの黒字。韓国は大きくは日本から部品や素材を輸入して製品を作り、それを海外で売って利益を出している構造なので、韓国の輸出が増えれば増えるほど日本からの輸入が増え、貿易赤字が増える。


  • セブンイレブン、売上高3兆円を突破
単一チェーンで売上高が3兆円を超えるのは初めてらしい。GMSのような大型店ではなく、日販70万円程度の30坪の小型店の集まりが国内最大になるっていうのはすごいね。コンビニ業界は既に店舗数が飽和しているので今後は潰し合いが中心となり、各社の差別化によって格差がつくのだろう。スーパーも深夜営業、無人営業などでコンビニのパイを奪おうとしているので、最強なのはスーパーの価格設定でのコンビニなんだけど。


  • 北の湖親方、再び理事長・・・角界の人材不足露呈、内向き体質は変わらず
日本相撲協会が30日役員改選(2年任期)を行い、北の湖理事が約3年半ぶりに理事長に復帰した。これに対していろいろ批判する向きはあるようだが、相撲興行システム自体がこれまで閉鎖的な歴史的環境の中で育まれたものなんだろうし、なんでもオープン化すれば健全になるとは限らない。ほんとに近代的にするのなら株式会社春日山部屋にして親方を社長、力士を従業員、横綱は取締役みたいな感じで上場を目指す。日本相撲協会は相撲くじを販売して・・・みたいになるとそれはそれで面白そうだが、相撲そのものが面白くなるのかどうかは微妙だ。


  • 職場パワハラ6類型
厚労省のワーキンググループが30日、職場でのパワーハラスメントに当たる可能性のある行為を6つに類型化した報告書をまとめたらしい。

1. 身体的な攻撃・・・暴力、傷害
2. 精神的な攻撃・・・脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言
3. 人間関係からの切り離し・・・隔離、仲間はずし、無視
4. 過大な要求・・・業務上不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5. 過小な要求・・・能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない
6. 個の侵害・・・私的なことに過度に立ち入る

ということらしいが、確かにパワハラはよくないが意識を強くし過ぎると職場での人間関係の希薄化を招くことにもなり、企業の活力低下にもつながりかねない。セクハラもそうだが、こういうのが起きる環境というのは閉鎖的で組織内の動静が周囲に伝わらないから起きやすくなったりもするので、企業の組織管理や従業員へのメンタルヘルスケアの体制整備なども求められる。